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定禅寺通を24時間楽しめるエリアにしたい。 社会実験「定禅寺ストリートアライアンス」とは
「敷地に価値なし、エリアに価値あり」。そんな言葉を聞く機会がありました。それまでは賃貸不動産業を経営しているものとして、敷地に価値を持たせることを考えていましたが、今は「支持される」価値ある定禅寺通エリアにすることで収益が生まれ、それが活性化につながると信じて一企業として参加させていただいています。未来の子どもたちのためにも、訪れる人も住んでいる人も楽しめる定禅寺エリアを創っていかなければならない。官民連携で「オール市民」「オール県民」で考えていくべき大切な時期だと考えています。
-定禅寺通沿道のビルである定禅寺ヒルズの地権者でもある「仙台協立」代表取締役社長 談
今回お話をお聞きしたのは、地域の価値向上のためのまちづくりに貢献し、賃貸不動産会社として仙台で50年の実績を持つ「株式会社 仙台協立」代表取締役の氏家正裕さん。
定禅寺通活性化検討会において実践的な取組みを行うワーキンググループである「定禅寺ストリートアライアンス」の代表を担い、これまで3回実施された社会実験の先頭に立ち、積極的に推進されています。
仙台市民のひとりとして、せんだいタウン情報machico編集部がお話をお聞きしています。
みなさんにとって、定禅寺通エリアはどんな場所ですか?どんな変化があるといいですか?みなさんが「こうなったらいいな」と思う定禅寺通エリアをイメージしながら、ご一読いただければと思います。
定禅寺通活性化検討会と定禅寺ストリートアライアンス
あらためましてmachico編集部より定禅寺通活性化検討会と会員の皆さんによる取組みをご説明します。定禅寺通活性化検討会は、定禅寺通に関係する町内会や街づくり団体、定禅寺通の沿道地権者などにより構成され、定禅寺通エリアの将来像、エリアの活性化やさらなる魅力向上につながる取組みなどの検討を行っています。現在も、これからの定禅寺通エリアのまちづくりについて様々な議論されているそうです。
定禅寺通エリアが将来的にどうなっていくのか?仙台市民のひとりとして興味深くお聞きしました。
定禅寺通エリアといっても、立町・国分町・一番町などなど、各エリアによってそれぞれの特色があります。住居エリアと商業エリアでは、そこに居る人もエリアの役割も違います。その特色の違うエリアを同一視した進め方はできないので、現在、定禅寺通活性化検討会の中でも、それぞれのエリアでプロジェクト型のワーキンググループを作り、連携しながらそれぞれのエリアで実践的な検証をしています。
そのプロジェクト型のワーキンググループのひとつ、エリアとしては定禅寺通と国分町通の交差点から東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)の前あたりまでを対象にこれまでに実施してきたプロジェクトが、氏家さんが代表を担う「定禅寺ストリートアライアンス」です。
そして晩翠通より西のエリアを担っているのが、すでにご紹介した立町の老舗洋菓子店「とびばいさ甘座(あまんざ)」の工場長 渡邉靖水さんです。
西エリアの社会実験「LIVING STREET PROJECT」などをご紹介した特集はこちら
こういったエリアごとの役割分担をお伝えした上で、インタビューでお聞きした氏家さんの声をお届けします。
みんなの想いと現実がリンクするのかを知るための社会実験
専門家や有識者、企業も交えて意見しあう定禅寺通活性化検討会。
2021年1月現在、定禅寺通エリアのまちづくりの基本構想策定に向けた各種検討が定禅寺通活性化検討会で進んでいます。その目指すべき姿が市民に受け入れられるのか、想いと現実がリンクするのかを実験するのが「定禅寺ストリートアライアンス」であると氏家さんは説明してくれました。
「構想段階ではありますが、住居も多く閑静な西エリアは『豊かに暮らせるエリア』。
商業としての賑わいのある東エリアは『24時間楽しめるエリア』と位置づけようと考えています」
「沿道の不動産オーナーやテナントを中心として、公共空間との境目なくボーダーレスに利用することによって街の賑わいを恒常的に作っていきたいと考えていて、その手段として椅子やテーブルを置いてみたりしながら、定禅寺通エリア将来像を描いています。その実現のためには、相応の投資と仕組みづくりが必要なんです。そのために思い描いているイメージに対して、訪れた人や住んでいる人に賛同して利用していただけるかを実験しています」
写真は、2019年に実施した社会実験「定禅寺通ストリートパーク」の様子。車道の一部を3日間だけ閉鎖して実験。什器のデザインや製作、手配・設置はすべて民間が対応し、定禅寺ストリートアライアンスの費用も人員も民間が負担しているとお聞きし驚きました。氏家さんは「ずっと置いておけないから搬入したり撤去したり、すごく大変だったけどグッドデザイン賞をもらいました!」と笑顔で話されていました。
収益の一部をまちづくりに還元していく持続可能な仕組みづくり
「自分たちだけで実施しなさいと誰かに言われているわけではないんです。もちろん仙台市がテーブルを貸し出してくれることもあります。でも、定禅寺通は仙台・宮城の顔であるべき素敵なイメージがあると思っています。社会実験でそのイメージを表現するためにも、伝わるものにしなければいけないだろうと思い用意させていただいています。かっこいいバーのキッチンカーを手配して営業してもらったりと、如何に定禅寺通エリアが素敵なイメージになるかにこだわっています。「定禅寺ストリートアライアンス」の一員として、エリアの価値を高めたいという想いで一企業として費用も負担しながら、社会実験を行っています。」
「また、将来的にはこのような取組みの収益をまちづくりに還元できる仕組みづくりをしたいと考えています。収益の一部を「定禅寺ストリートアライアンス」のようなまちづくり組織に入れてもらい、ケヤキの保持、環境保全、安全管理などに循環させることが必要。賑わいづくりなどのまちづくりとそれを持続可能にする収益を合わせて考えていかなければなりません」
状況により変更の可能性もありますが、今年も社会実験の実施を検討しているそうです。machico編集部も積極的に参加して体感し、感じたことを発信していきたいと思います。今年の社会実験の詳細が決まり次第、こちらのサイトにアップしていきます。みなさんもぜひご一緒に!
仙台が賑わいのある街であり続けるために
老朽化による東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)の移転。定禅寺通のケヤキ並木沿いにあった文化施設が姿を消そうとしています。みなさんは、その場所にどんな風景を描きますか?
「県民会館の移転は、宮城県民のシンボルロードとも言える定禅寺通のこれからを考える上で、無視できない大きな出来事。きちんと目を向けて、関心を持って考えていくべき」と氏家さんは話します。
「最終的には、定禅寺通エリアに住んでいる人たちにも来訪者にも喜んでもらうことが必要。だからこそ、定禅寺通エリアの中でも、プロジェクト型ワーキンググループをいくつかに分けてそれぞれのターゲットに対して実践的な取組みを行っています。但し、定禅寺通エリアのどのエリアも日本一の歴史あるケヤキ並木を象徴にしていくことへの想いは共通のはず。定禅寺通がより活性化して仙台に来る理由のひとつとなり、全国的に『選ばれる仙台』の重要な要素になるといいですね。」
「メインの駅周辺に人が一極集中し、駅から離れている場所は廃れていく。そういった地方都市はとても多いです。仙台市も今同じ状況になりつつあります。仕掛けが必要です。
定禅寺通を活かした動線と回遊が必要ですね」
「国分町は店舗構造・コロナ問題、接待文化が時代に即さなくなったことなどの要因が重なり、緩やかな収縮は仕方がないと考えています。しかし、国分町を守るためにも、店舗構造や隣接する定禅寺エリアを充実させ、国分町に人が流れるようにする必要もあると考えています」
「仙台市全体として賑わいのある街であり続けるためには、そのエリアごとに役割分担をもった回遊が必要。そして各まちづくり団体との連携も重要で機運を高めていくべき」と話す氏家さん。
仙台という土地の個性を知り尽くしたプロのリアルで実践的な言葉は、私たち仙台市民も「今こそ考え、声を届けるべきとき」ということを教えてくれるものでした。